●レントゲン検査の被爆
前回の「レントゲン検査は危険か」は我ながら長たらしい。
レントゲン検査による被爆に要点を絞ると以下のとおり。
放射線障害は被曝した線量で程度が異なるます。線量が
250ミリシーベルト以下では症状は出ません。
通常のレントゲン写真撮影による放射線被曝は線量が少ない。
検査で問題が生じることはまず考えられません。
1)胎児が放射線に被曝した場合、奇形が発生する可能性が
高くなるのは、被曝線量が100ミリシーベルト以上で
被曝の時期が受精後2〜8週(最終月経から数えると4〜10週)
の間の場合です。妊娠4〜10週というと母親も妊娠を知
らずにレントゲン検査を受けてしまったりすることがありますが、
整形外科で行なうレントゲン検査で胎児への影響が大きい腰椎の撮影
でも被曝線量は5ミリシーベルト程度です。つまり腰椎のレントゲン
撮影でも20回受けなければ大丈夫ということです。
まあ万全を期すなら妊娠の可能性のある女性が下腹部が照射野に入る
レントゲン検査を受けるなら、月経の開始日から10日以内に受ける
のが無難でしょう。
2)胎児への放射線被爆による影響としては精神発達遅滞が知られて
います。これも影響が発生する線量は100ミリシーベルト以上です。
しかも、感受性の高い時期は受精後8〜25週であり、この時期なら
母親自身も普通妊娠に気づいておりレントゲン検査を意識的に避ける
ことができます。
3)放射線というと白血病を連想して怖がる人が多いです。
しかし、広島、長崎での原爆被爆者を対象にした調査でも、200
ミリシーベルト以下の被曝集団に白血病の発生率の増加はありません。
通常のレントゲン検査での被曝線量は数ミリシーベルト以下ですから、
白血病の心配をする必要はまったくありません。
4)白血病は癌のうちではまれなものですが、ほかの癌についても、
200ミリシーベルト以下の被曝線量であれば、自然の発生率よりも
上回らないことがわかっています。
5)遺伝的影響ですが、さまざまな疫学調査が行なわれています。
放射線被曝によって遺伝的影響が発生することの証拠はありません。
遺伝病は放射線被曝がなくとも自然に発生しますが、放射線被曝に
より自然に発生している遺伝病の発生率が2倍になる線量は
1000ミリシーベルトであり、通常のレントゲン検査で
遺伝的影響は起こりません。
6)癌の治療などで生殖腺に比較的大量の放射線被曝を受けたとしても、
子供を産む可能性のない年齢の人なら遺伝的影響を心配をする必要は
まったくありません。
レントゲンは、慎重に扱う必要があります。しかし検査で得られる
情報は非常に重要で診療に不可欠です。レントゲン検査が患者さんに
多くの利点があるから撮影することをご理解いただきたいと思います。
(2000年8月2日)
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