粘弾性
整形外科と粘弾性

粘弾性   整形外科がなんで粘弾性?とお思いですか。人体の物性を知らずにどうして運動器の治療 ができるかって聞きたいですね、私は。腕のいい大工は木材など材料の性質をよく知っていて 無駄なく無理なく建築します。整形外科だって同じです。 腱、骨、靭帯、筋肉など人体を構成する材料の物理的性質(物性)の知識は大変重要です。 腱、骨、靭帯、筋肉など生体材料には、粘弾性という特殊な性質があります。腱や筋肉は 引っ張れば伸びるゴムやバネみたいなものだと思いますか。違うのです。 ゴムやバネは弾性体です。弾性体はフックの法則(F=kx)に従って、大きな力で 引っ張れば、引っ張った時間には関係なく長く伸びるものです(だって時間の関数ではないでしょ)。 強く引っ張ればそれだけ長く伸びますが、しかし弾性限界を超えると破断します(塑性)。 生体は(粘弾性体)はもっと複雑な性質をもっています。加えた力が伸びに結びつくのに 時間依存(time dependent)性があるのです。具体的に言いますと、小さい力でもゆっくり時間 をかけて引っ張れば、ゆっくり伸び続ける性質があるのです。大きい力で瞬間的に引っ張れば 筋肉や腱は破断しますが、弱い力でも持続的に長い時間をかけて伸ばせば破断しないで ずいぶん伸びるのですよ。 リハビリのときに例えば肩の関節を動かすとしましょう。ゆっくりやればいいのです。速く 動かすと痛いだけでなく筋肉を破断したり傷めます。 背骨の変形にしても同じです。弱い力で(壊れないように)、ゆっくり時間をかけて矯正 すれば、無理なく矯正できます。これは物性によることですから、日常のリハビリでも手術に おいても原理は同じことです。 私は高度な脊柱変形を矯正する手術の時に、このことを利用して危険なはずの手術を事故 なく行うことができました。この知識は今の診療所での診療にも生きています。 (1999年12月3日)

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